2017年11月26日日曜日

週末読書:ドル円試される押し目買い需要 (三菱UFJ)

前週末 17 日に 10 月 16 日以来となる 111 円台(111.95)を示現した地合いを受け、11/20 週のドル円は 112.02 で寄り付いた(日本時
間の 20 日午前 9 時)。その後、欧米の主要な株価指数が底堅く推移し、米長期金利の低下に歯止めがかかったことから、ドル円も一旦は持ち直し、週間高値 112.71 まで上昇した。

しかし、その後も同水準での戻り上値の重さが確認されると日米双方の祝日を控えた 22日にドル円は軟調に推移。前週の安値や 200 日移動平均線(111.70近辺)を下抜けすると、111.14 まで下げ幅を広げた。

また、その後、公表された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(10/31~11/1 開催分)を受け、改めてドル売りが強まり、ドル円は111.07 と 9 月 18日以来となる安値まで下げ幅を広げた。議事要旨を受けて来月 12 月13 日の利上げを確実視する市場の見方に変化はないものの、18 年末までを見通した利上げの織り込み度合いがやや後退。

FOMC参加者内で依然として低インフレに対する慎重な意見が散見されたことを受け、来年 3 回程度の利上げを見込むFOMCと市場との乖離が拡大した格好となった。

今週の主要通貨の値動きを振り返ると円は中位程度にとどまるが、11 月を通じたパフォーマンスでは、円が最も上昇している。

ドイツの連立政権交渉の頓挫を受けてユーロ円が頭打ちとなった他、利上げ期待の後退を受けて加ドル円も軟調に推移。予想通りの利上げ決定後、EU(欧州連合)離脱協議の紆余曲折が警戒され、ポンド円もじり安に推移している。

正常化を進める欧米諸国と、緩和の長期化が見込まれる日本との金融政策の方向格差は依然明確だが、114円台定着がままならなかった残像が残る。13 年 12 月以来の水準まで造成された円ショート(ネットの円売り)2の調整(円の買い戻し)が炙り出されたことも、ドル円を下押ししたと考えられる。


来週は 12 月を迎え、市場のFOMC(12~13 日)への関心も高まっていこう。しかし、12月の利上げは概ね織り込み済みであり、「12月利上げ」によるドル買いは既に一巡したと考えられる。実際、ドル円は短期から中期ゾーンの日米金利差の拡大にほとんど反応を示さないばかりか、足もとでは逆相関にさえなっている。代わってドル円との相関を強くしているのが、米国の長期金利の動向だ。

ここから読み取れるのは、目先の米経済の好調さや利上げは、既にコンセンサスとなっており、一段のドル高材料としては機能していないこと、市場の関心が米経済の持続的な成長や低インフレからの脱却といった長期的なテーマへと移ったことだろう。


しかし、その来年の米経済を展望する際、重視される米国の税制改革法案の行方は、上院での協議を経て成立まで漕ぎ付けることができるか不確実性が高い。その上、法案が成立した場合も、選挙期間中の公約に比べ、減税規模が縮小した為、市場で米経済の潜在成長率やインフレ期待が高まるとの見方は台頭しづらいだろう。特に低インフレが続く現状については議事要旨の通り、FOMCでさえ、明確な答えをまだ見出せていない。

対する日本では黒田日銀総裁が、異次元緩和の副作用に言及した際に用いた「リバーサルレート」といった議論に関心が集まっている。こうした言及は、先週指摘の通り、今年の 4 月や 10 月の金融システムレポートでも既にみられており、必ずしも新しい動きではない。

しかし、それでも低過ぎる長期金利やフラット過ぎるイールドカーブをいずれ是正するとの次なる一手が次第に意識されそうだ。物価安定目標(2%)にかなりの距離を残す中、その時期はまだ当分、先だろうが、中期的にみればこうした見方は、「日米の金融政策の格差」がドル高円安を招くとする市場コンセンサスの根幹を揺るがしていこう。

特に、今後ともこうした言及が増えれば、地ならしを狙ったものと市場が受け止め始める可能性がある。今後の総裁任期到来(来年 4 月)も見据え、市場の日銀の言動への関心も高まろう。

クロス円が既に騰勢を失っていることからも明らかな通り、日米、または内外の金融政策格差による円ショート戦略は、しばらくの間、影を潜めよう。ドル円のサポート役として期待された 200 日移動平均線(111.70 近辺)があまり機能しなかったこともあり、来週もドル円は軟調に推移しそうだ。

もっとも、ドル円が 110 円付近まで下落する場面では、本邦からの対外投資フロー、特に証券投資を背景とする円売り需要に支えられ、ドル円の大幅な値崩れは避けられるのではないか。特に、米国の短期ゾーンの金利は上昇しており、本邦勢からみた為替ヘッジコストは上昇。

米国の長期金利低下を受け、一時的にせよヘッジ外債投資のヘッジ外しやオープン外債の活発化(いずれも円売り材料)も見込まれる。また、ドル円の直先スプレッドも、短期のドル資金調達需要が根強いことを示唆している。12 月に入り、こうしたドルへの特需によってドル円が不測の上昇軌道を辿る可能性には一応の警戒が必要だろう。

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