WSJ:日本株好調、景気回復ついに本格化か
世界の投資家は日本が長い経済不振から抜け出しつつあるとみている。その背景には、世界中で経済成長が加速しており、株価を数年ぶりの高値に押し上げているとの期待感がある。
世界第3位の日本経済は、第2四半期に2年ぶりの高い成長率を示し、この10年以上で最長となる6期連続プラス成長を記録した。日本銀行の異次元の金融緩和政策と、世界中で始まった景気回復に後押しされた。企業の設備投資や個人消費が回復し、円安のおかげで日本の輸出品の競争力が増し、日銀による景気刺激策は引き続き市場を支えている。
そうした要因は日本株にとっても好材料となってきた。日経平均株価は2日に2年ぶりの高値を付けた。終値は、1996年以来の最高値となった2015年の高値まであと2.2%ほどに迫った。
それでも多くの投資家は日本に対して慎重な態度を崩していない。これまで多くの割安株狙いの投資家が、比較的割安な株式と景気復調への期待に裏切られてきたからだ。この数年間を振り返ると、日経平均にも何度か上昇局面があった。だが経済成長の低迷、低インフレ、不十分なコーポレートガバナンス(企業統治)などが足かせとなり、1989年の過去最高値3万8916円に近づくことはなかった。他の先進諸国の株価と比べると、日本株は40%近くも割安になっている。しかし日本に長期的に投資したいと考える外国人投資家がほとんどいないこともあり、外国からの投資資金は散発的にしか流入していない。
日本の景気回復が持続的になれば、多くの投資家は金融危機からの回復が世界的に加速している証拠だと捉えるだろう。日本の経済成長は数十年にわたって欧州や米国に後れを取ってきたのだ。
ドイツ銀行のチーフ国際エコノミスト、トルステン・スロック氏は「初めに米国が回復し、その後に欧州の回復が加速したが、日本のデータもようやくそれが始まったことを示しているようだ」と述べた。「事実を目の当たりにしているにもかかわらず、人々は昔の話にしがみ付き、新たな展開になっていると気付くまで時間がかかり過ぎている」
日本市場の長期的な不振は1990年代初めの「バブル経済」の崩壊に根差している。地価と株価が暴落したことで、日本の金融システムは2000年代初頭に完全に回復するまで大混乱に陥っていた。企業や消費者が債務を削減しようとしたことでデフレや閉塞(へいそく)感がもたらされ、政治的な混乱によって株主に優しい政策の実施が遅れてしまった。
日本企業の業績は改善されてきたにもかかわらず、国際的な投資家の多くは日本を敬遠してきた。出だしのつまずきや、平均以下の経済状況が何年も続いたことが響いた。
米投資管理会社アライアンス・バーンスタイン・ホールディングの調査によると、収益性の指標の1つである株主資本利益率(ROE)は、安倍晋三氏が首相に就任した2012年終わりの5%超から2017年には8.4%前後にまで改善してきた。それでも日本株は純資産(負債を除いた総資産の価値)の平均1.5倍で取引されており、先進国市場の平均より36%も割安となっている。アライアンス・バーンスタインの分析によると、日経平均は今年に入ってから約6.5%も上昇しているにもかかわらず、日本株市場における外国人投資家の存在感は薄いままだ。
アライアンス・バーンスタインのチーフ・マーケット・ストラテジスト、バディム・ズロトニコフ氏は「投資家は日本を完全に見放してきたが、ここにきてようやく戻り始めた」と話す。ただ、「投資家の多くは依然として懐疑的だ」とも語る。「繰り返し痛い目に遭ってきたからだ」
景気改善の証拠が積み上がっているにもかかわらず、日銀は上場投資信託(ETF)を年間6兆円分購入することで市場を支え続けている。日本企業は社外取締役を導入したり、自社株買いを通じて株主への還元を増やしたりするなど、投資家の気を引くためのさまざまな措置を講じてきた。
日本企業が最先端を走る分野には人工知能(AI)やロボット工学などがある。日本の自動車部品メーカーは電気自動車へのシフトの恩恵を受けそうだ。化粧品メーカーや部品製造業者は、拡大しつつあるアジアの中間層に販売することで利益を増やすことになると投資家はみている。
家電大手ソニーと化粧品大手コーセーは今年、力強い収益成長もあって株価が上昇してきた。調査会社ファクトセットによると、両社の株価は年初来でそれぞれ28%、31%上げている。
米資産運用会社ニューバーガー・バーマンのシニアポートフォリオマネジャー、ベンジャミン・シーガル氏は、日本に対してより楽観的になってきたと述べ、厳選した日本企業を今年に入ってポートフォリオに追加したと明かした。「私は日本への投資を完全に否定していたが、徐々に肯定派に変わりつつある」と言う。「(日本では)本当に変化が起きているようだ」
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