図表のように、ドル円レートは年初から円高方向に進んできた。名目のドル円レートが円高になった一方で、米国の為替報告書でも指摘されたように、実質実効為替レートではそれほど円高が進んでいない。
この実質実効為替レートとは、貿易相手国との為替レートについて、相対的な物価の変化を加味しつつ、その貿易額をウェイトにして加重平均したものである。そのため、実質実効為替レートには、貿易相手国との相対価格や貿易シェア、為替レートを通じて、競争力を反映させた輸出の価格指数という一面がある。
実質実効為替レートをみると、ドル円とは異なった印象がある。例えば、ドル円レートが2018年初の1ドル110.74円から3月時点で106.01円と4.3%円高ドル安になった一方で、実質実効為替レートは73.22から76.08へと3.9%の円高にとどまっている。また、2017年初と比べると、ドル円は7.6%(114.69円→106.01円)の円高ドル安に対し、実質実効為替レートはむしろ0.1%の円安(76.14→76.08)になっており、動きが異なっている。
もちろん、企業が重視する名目のドル円レートが円高に振れているため、海外で稼いだ利益を国内に還流させる際の円建て評価額を通じた企業業績への下押し圧力が懸念されることは事実である。しかし、円高の輸出への実質的な影響は、それほど大きくない可能性がある。
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