2018年1月20日土曜日

週末読書:陶酔相場に忍びよるインフレの足音

日経新聞

相場の勢いを支えるのは米主要企業の業績だ。トムソン・ロイターによると19日までに10~12月期決算を発表したS&P500種株価指数の採用企業は53社。うち79.2%で1株利益が市場予想を上回り、86.8%で売上高が予想を超えるなど好調な滑り出しだ。

19日は米政府のつなぎ予算の期限で、取引時間中は上院の議論が紛糾し政府機関の一部閉鎖のリスクが意識された。もっとも、LPLフィナンシャルによると過去に政府機関が閉鎖された期間のS&P500の下落率は平均で0.6%と小幅。相場への影響は小さいとの見方からS&P500とナスダック総合株価指数は過去最高値を更新した。

途切れぬ相場上昇が株式に投資家の資金を呼び寄せている。バンクオブアメリカ・メリルリンチによると、17日までの4週間で株式を対象とする投資信託に流入した資金は580億ドル(約6兆4000億円)と過去最高を更新した。同社のマイケル・ハートネット氏は「『持たざるリスク』が意識されている」と指摘する。

トランプ政権発足直後は慎重だった個人投資家の心理も明るい。米個人投資家協会の週間調査によると、17日時点で今後6カ月の株式相場に「強気」との回答から「弱気」との回答を引いた比率は32.7%と前週から9.1ポイント上昇。10年12月下旬以来ほぼ7年ぶりの高水準だった4日時点の44.2%に再び迫っている

陶酔状態ともいえる米株式相場に忍び寄るのが物価上昇の足音だ。税制改革を受けて米企業が投資と雇用増に動き始めたのと軌を一にするように、市場のインフレ見通しを示す10年物の米国債と物価連動債の利回り差である「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」が上昇している。

昨年6月に1.7%を割り込んだBEIは税制改革の議論が本格化した11月以降に上昇し、19日は一時2.08%とトランプ政権下での最高値に並んだ。税制改革で企業の投資や従業員の給与が増えれば物価が上がるとの見方が広がったためだ。

米財務省が18日に実施した10年物の物価連動国債の入札では需要の強さを示す応札倍率が14年5月以来3年8カ月ぶりの高水準。海外中央銀行など大口投資家を含む「顧客」の応札が競争入札に占める比率は78.9%と過去最高だった昨年5月の80.3%に迫った。

予想インフレ率が上昇する局面では利付債を売り、物価連動債を買う取引が増えやすい。長期金利の指標である米10年債利回りは19日に2.66%と14年7月以来の水準に上昇(債券価格は下落)した。2.63%程度を目先の節目とみていた市場参加者にとって「株買いをいったん手じまう理由になる」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との声も聞こえ始めた。

米株式相場の陶酔を支えるのは世界経済の同時成長や企業業績の拡大に加え、鈍い物価上昇率の下での低金利と中央銀行による緩和的な金融政策だ。今週バンクオブアメリカ・メリルリンチに個人投資家から寄せられた質問で最も多かったのは「インフレに備えるにはどうすればいいか」だったという。市場参加者は物価上昇が陶酔相場の景色を変える可能性に身構え始めている。

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