読書:WSJから
次の株価大暴落に備えて何をすべきか
1987年10月「ウォール街史上最悪の日」に学ぶ教訓
米株式市場が先週に過去最高値を更新し、カレンダーが9月から10月に変わった今、筆者と一緒に30年前の1987年10月16日の金曜日を思い出してもらいたい。
米株式市場は年初来で30%超の上昇を示していたが、トレーダーは神経質になっていた。というのも、金利は上昇中、税率は流動的で、米国は貿易相手国と口論になったり、イランと小競り合いを演じたりしていたからだ。
ミネソタ州セントポールの若い投資家ジェームズ・オショーネシー氏は、米大型株の急落で利益を上げる手段として株価指数のプットオプション「数万ドル」分を購入していた。株価情報サービスを注視しつつ、日に日に不安を募らせた。ダウ工業株30種平均はついに108ドル35セントという過去最大の下げを記録。3億3900万株近い出来高も過去最大だった。
ミネソタ州セントポールの若い投資家ジェームズ・オショーネシー氏は、米大型株の急落で利益を上げる手段として株価指数のプットオプション「数万ドル」分を購入していた。株価情報サービスを注視しつつ、日に日に不安を募らせた。ダウ工業株30種平均はついに108ドル35セントという過去最大の下げを記録。3億3900万株近い出来高も過去最大だった。
オショーネシー氏は「完全に売られ過ぎだ」と考えた。月曜日には必ず反騰するので、プットオプションを保有し続けたら「自分は大損することになる」と予想した。「全身がパニックの感情に襲われた」と振り返る。「とにかく逃げなくてはならなかった」。同氏は金曜日の取引終了30分前にブローカーに電話し、保有していたすべてのプットオプションを売却した。
その週末、オショーネシー氏は「間一髪で銃弾をよけたかのように、非常にほっとしていた」という。投資家の多くがその急落を疑問視していたので、同氏は月曜日に「リリーフラリー(安堵感からくる反騰)」があると確信していた。同氏はプットオプションを売却することで大損を回避できたと思っていた。
ところが、月曜日の取引開始からわずか90分間でダウ平均は208ドルも下げた。これを受けて機関投資家は損失を最小限にとどめるための手法「ポートフォリオ・インシュアランス」を用いて大量に売却した。通常はこうした場面で買いに回るシカゴの先物トレーダーは、さらなる下落を見込んで様子見を決め込んだ。
その日の取引終了時点でダウ平均は22.6%の暴落となっていた。ジャーナリストのダイアナ・エンリケス氏は新著「A First-Class Catastrophe(第1級の大惨事)」の中で1987年10月19日を「ウォール街の歴史で最悪の日」と呼んでいる。その大暴落のスケールを2017年に当てはめると、ダウ平均が1日で5000ドル超も下げたことになる。
「現金の保有を恐れるな」
暴落など起こり得ないと考えている人は株式市場の暴落を生き延びることができない。しかも1987年10月19日のようなことはまた起きるのだ。実はすでに何度か起きている。2010年5月6日のフラッシュ・クラッシュではすぐに回復したとはいえ、多くの株式が60%超の暴落を示した。2015年8月24日、ダウ平均は6分間で1000ドル超(7%)も下げ、結局その日は4%近く下げて引けた。S&P500種指数は2007年10月のピークから2009年3月9日の安値まで、再投資された配当金を計算に入れても55.2%下げている。
エンリケス氏の著書やオショーネシー氏の体験談は、「人間の性質を無効にすることはできない」ということを思い出させてくれるものだ。「歴史の健忘症のせいでわれわれは過去の大失敗を繰り返す運命にある。その唯一の防御手段は、起きたことを正確に覚えておくことだ」とエンリケス氏は述べている。
オショーネシー氏の例で見てみよう(同氏は現在、コネティカット州スタンフォードのオショーネシー・アセット・マネジメントで60億ドル近くを運用している)。同氏の当初の分析は、今では信じていない要因に基づいていたにもかかわらず、完全に正しかった。米株式市場は割高だった。1986年9月から1987年8月末までの期間に米株式市場の株価収益率(PER)は33%も上昇し、16倍から21.4倍になっていた。1961年末以来の最高水準だった。
しかし、彼の感情的な反応は完全に間違っていた。あと1営業日、プットオプションを保有していれば、もうけは約10倍になっていたという。
エンリケス氏は1987年の大暴落の要因として、効果のない規制と取引の複雑なメカニズムの破綻を挙げている。金融歴史家で ゴールドマン・サックス の元パートナーのバリー・ウィグモア氏は、何が原因でその大暴落(あるいは、もっと深刻だった1929年の大暴落)が起きたのかについて確かなことは誰にも分からないと話す。
とはいえ、歴史はいくつかの明確な教訓を与えてくれた。
長期的な平均と照らすと、米国株は過去30年間の大半で割高となってきた。つまり、株式市場から完全に資金を引き揚げていたら、暴落をうまく避ける以上に継続的なリターンを上げる好機を逸した可能性が高い。
とはいえ、過去数年間で最も上昇した銘柄―― フェイスブック 、アマゾン・ドット・コム、 ネットフリックス 、グーグル(親会社アルファベット)のいわゆるFANG銘柄――を大量に保有している投資家はポジションの削減を検討するべきだろう。1987年と1929年の大暴落では、それまでの上昇幅が最大級だった銘柄が、最大級の下落幅を示すという傾向が見られたからだ。
何よりも「現金の保有を恐れるな」と主張するのは、テネシー州メンフィスの資産運用会社サウスイースタン・アセット・マネジメントのステイリー・ケイツ副会長だ。1987年10月19日、ケイツ氏と若い同僚はクオトロンの端末を囲み、市場が暴落するのを目の当たりにしながら買い注文を出していた。「その日のわれわれの究極の慰めは、ポートフォリオの25~30%を現金で保有していたことだった」
それがなければ「われわれは買い注文を出すことができなかっただろう」とケイツ副会長は振り返る。他の人が投げ売りしているとき、株式の購入に使える手元の現金は、暴落時の最も確実な勇気の源泉と言える。
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