急落予見していた外国人の「2兆円」売り 個人撤退で一段安も
2018/02/09 16:49
米長期金利の上昇をきっかけとした世界的な株安に歯止めがかからない。日経平均は1月23日に付けた約26年ぶりの高値である2万4124円から3週間足らずで11%もの急落に見舞われた。振り返ってみると日経平均が上値追いを続けていた1月、海外投資家は週間で1兆円を超える規模の売りを2度にわたり日本株に浴びせていた。海外勢は2月の急落を予見していた可能性がある。
東京証券取引所などが発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は1月第5週(1月29日~2月2日)に日本株(現物と先物の合計)を約1兆2000億円売り越した。過去10年でも6番目の大きさだった。海外勢の売り越しは1月第2週(9~12日)も1兆円を突破。株価水準の高さを考慮しても1カ月で2回の「1兆円売り」は珍しい。今年の売り越し累計は約2兆5200億円に膨らんだ。
兆しがなかったわけではない。いまや株安の震源として世界に名前がとどろいている米株式相場の変動性指数(VIX)。10割れの低水準が恒常化していたVIXは1月中旬からじわりと水準を切り上げていた。1月の海外勢の売りは、このVIXの動きと連動したものだった可能性がある。
前回、海外投資家から1カ月で2度の1兆円超の売り越しが出たのは2015年8月。中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げに踏み切った「人民元ショック」で世界的な株安が起きた。日経平均は15年8月の2万1000円近辺から9月には1万6900円台まで急落した。
今回不思議なのは、海外勢が売ったにもかかわらず1月の日経平均が26年ぶりの高値圏に踏みとどまり続けたことだ。これについては「日銀による上場投資信託(ETF)の買いと、個人投資家の信用買いが下支えしたため」(国内証券の情報担当者)との解説が多い。
東証によると、今年に入り個人の信用取引での新規の買いは累計約4200億円。日経平均が2万2000円を上回った17年11月以降では累計約1兆1300億円にのぼる。「逆張り」中心だった個人が上値を買い進む「順張り」に戦略を変えた結果、海外勢の売りを吸収して相場下落を食い止めた構図が見て取れる。
こうした国内勢の買い持ち高が、直近2週間の相場下落で一気に含み損に転じたことは想像に難くない。2年5カ月ぶりの水準に積み上がった信用買い残の一部は、追加証拠金(追い証)の発生で反対売買を迫られた公算が大きい。国内勢の撤退売りで、相場は支えを失うことになりかねない。
足元では相場変動を売買の手掛かりとして重視するCTA(商品投資顧問)や「リスク・パリティー」ファンドが「2000億ドル(約22兆円)の世界の株式を売却している過程にある」(米バンクオブアメリカ・メリルリンチ)との試算がある。「後始末」による株売りは今後1カ月にわたるとの見方もある。
直近の下落の幅と衝撃度を踏まえると、日経平均が急落前の水準を回復するには一定の時間がかかりそうだ。野村証券の試算では17年10月以降の「トレンド追随型」のCTAによる日経平均先物の平均買いコストは2万2350円近辺。この水準では戻り売り圧力が強まるとみられる。
中長期の株価トレンドを示す200日移動平均は2万1003円(9日時点)。「これを下回れば、さらなる株安を警戒する必要がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)。上昇基調が崩れれば、個人の信用買いがさらに反対売買を迫られる可能性もある。相場はもう一段の下げ余地があるとの見方が多い。〔日経QUICKニュース(NQN) 張間正義〕
東京証券取引所などが発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は1月第5週(1月29日~2月2日)に日本株(現物と先物の合計)を約1兆2000億円売り越した。過去10年でも6番目の大きさだった。海外勢の売り越しは1月第2週(9~12日)も1兆円を突破。株価水準の高さを考慮しても1カ月で2回の「1兆円売り」は珍しい。今年の売り越し累計は約2兆5200億円に膨らんだ。
兆しがなかったわけではない。いまや株安の震源として世界に名前がとどろいている米株式相場の変動性指数(VIX)。10割れの低水準が恒常化していたVIXは1月中旬からじわりと水準を切り上げていた。1月の海外勢の売りは、このVIXの動きと連動したものだった可能性がある。
前回、海外投資家から1カ月で2度の1兆円超の売り越しが出たのは2015年8月。中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げに踏み切った「人民元ショック」で世界的な株安が起きた。日経平均は15年8月の2万1000円近辺から9月には1万6900円台まで急落した。
今回不思議なのは、海外勢が売ったにもかかわらず1月の日経平均が26年ぶりの高値圏に踏みとどまり続けたことだ。これについては「日銀による上場投資信託(ETF)の買いと、個人投資家の信用買いが下支えしたため」(国内証券の情報担当者)との解説が多い。
東証によると、今年に入り個人の信用取引での新規の買いは累計約4200億円。日経平均が2万2000円を上回った17年11月以降では累計約1兆1300億円にのぼる。「逆張り」中心だった個人が上値を買い進む「順張り」に戦略を変えた結果、海外勢の売りを吸収して相場下落を食い止めた構図が見て取れる。
こうした国内勢の買い持ち高が、直近2週間の相場下落で一気に含み損に転じたことは想像に難くない。2年5カ月ぶりの水準に積み上がった信用買い残の一部は、追加証拠金(追い証)の発生で反対売買を迫られた公算が大きい。国内勢の撤退売りで、相場は支えを失うことになりかねない。
足元では相場変動を売買の手掛かりとして重視するCTA(商品投資顧問)や「リスク・パリティー」ファンドが「2000億ドル(約22兆円)の世界の株式を売却している過程にある」(米バンクオブアメリカ・メリルリンチ)との試算がある。「後始末」による株売りは今後1カ月にわたるとの見方もある。
直近の下落の幅と衝撃度を踏まえると、日経平均が急落前の水準を回復するには一定の時間がかかりそうだ。野村証券の試算では17年10月以降の「トレンド追随型」のCTAによる日経平均先物の平均買いコストは2万2350円近辺。この水準では戻り売り圧力が強まるとみられる。
中長期の株価トレンドを示す200日移動平均は2万1003円(9日時点)。「これを下回れば、さらなる株安を警戒する必要がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)。上昇基調が崩れれば、個人の信用買いがさらに反対売買を迫られる可能性もある。相場はもう一段の下げ余地があるとの見方が多い。〔日経QUICKニュース(NQN) 張間正義〕
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