2018年5月2日水曜日

1億円超のがん治療費、誰が払う? ゲノム創薬で高騰(WSJ)

WSJより。医療は限界だと思います。それはサイエンスとしての限界ではなく、経済性の限界です。ここではアメリカ型の支払いシステムの話ですが、例えば日本の皆保険は確実に見直しを迫られるのでは無いでしょうか?

遺伝子情報を基に新薬を開発するゲノム創薬の登場により、特定の疾患の治療費が高騰している。米国では病院や医療保険会社はこうした高額治療を希望する患者の治療費をどう負担すべきか頭を悩ましている。
 子供などの難病対策に利用されるゲノム創薬による個別化治療は高額になってしまう。スイスのバイオ製薬ノバルティスは、新たに認可されたがん治療薬の公示価格を47万5000ドル(約5200万円)に、米ギリアド・サイエンシズは競合薬を37万3000ドルに設定している。
 だが病院や保険会社によれば、薬価の高さは始まりにすぎない。これらの薬剤治療の管理のためには、入院期間が長期化したり、その他の療法や薬を施したりするため、医療費はさらに高額となる。

病院が、こうした新たな治療費についてどの程度の支払いを受けるのかは明確になっていない。現行の医療費支払いシステムでは、一般的には投薬や病院での看護はカバーされるが、両方を合わせた医療費の扱いは決まっていない。はっきりしているのは、総額は治療薬の公示価格をはるかに上回るということだ。
 現在のところ、ゲノム創薬による治療を受けている人はほとんどいない。そのため、一般的な医療保険やメディケア(高齢者向け公的医療保険)は、ゲノム創薬に関する公式の医療費支払い制度が決まるまでは、個別に対応している。

次世代のゲノム創薬による治療が広まっているため、制度づくりは緊急課題である。開発の最終段階にあるブルーバード・バイオの鎌状赤血球病の新薬療法では、治療費に最大6週間の入院費を含める可能性がある。
  ギリアドのリンパ腫の新療法「イエスカルタ」は、昨年10月に認可され、他の療法が効果を上げなかった患者に処方されている。イエスカルタは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)と呼ばれる細胞療法だ。患者から免疫細胞を取り出して、ギリアドの研究所で遺伝子操作し、患者の体内に戻し、がんを追跡して攻撃する。

フロリダ州キシミーの薬剤師マーチン・フリーズ氏(62)は、最近13日間入院し、他の幾つかの治療薬や療法を併用しながらイエスカルタ療法を受けた。同氏は、医療費は75万~100万ドル(約1億1000万円)に達すると予想している。
 フリーズ氏は、フロリダ州タンパにあるモフィットがんセンター(以下モフィット)でまず半日間、いわゆるアフェレシス(血液成分分離=血液を採取して、血小板や白血球などの血液の一部を取り除いてから、残った血液を再び患者の体内に戻す手法)装置につながれた。この装置で同氏の免疫細胞(T細胞)を採取し、それをギリアドに送って、薬品(ここではCAR-T細胞)に遺伝子改変してもらった。

フリーズ氏はその後、3日間にわたって2種類の化学療法を受けた。これは改変された細胞(CAR-T細胞)を戻すに当たり、同氏の体を準備させるためのものだった。
 同氏は12月、モフィットに入院した。そこで、遺伝子改変された細胞(つまりCAR-T細胞)の注入と、副作用の経過観察が行われた。さまざまな病院によると、この経過観察には通常、1日当たり数千ドルかかる。フリーズ氏によると、この間に華氏104.8度(摂氏約40度)の発熱に対する治療を受けたほか、血漿製剤とステロイドの投与も受けた。神経学的副作用に打ち勝つためだった。

同氏は12月、モフィットに入院した。そこで、遺伝子改変された細胞(つまりCAR-T細胞)の注入と、副作用の経過観察が行われた。さまざまな病院によると、この経過観察には通常、1日当たり数千ドルかかる。フリーズ氏によると、この間に華氏104.8度(摂氏約40度)の発熱に対する治療を受けたほか、血漿製剤とステロイドの投与も受けた。神経学的副作用に打ち勝つためだった。
 1月には、白血球を増やす「ニューポジェン(G-CSF製剤)」の投与を受けた。加えて、定期的なフォローアップを通じ、持続的な神経学的副作用が出ていないかを確認した。

フリーズ氏は3月の時点で「既に今年の自己負担額が5000ドルに達した」と話していた。同氏は検査でがんの兆候がみられなかったことを受け、職場に復帰した。
 モフィットの関係者によると、フリーズ氏が契約する保険会社のユナイテッド・ヘルスケアは、治療費のうちユナイテッドがどの程度を負担するかについて、モフィットと合意に達した。病院はその負担条件を明らかにしなかった。ユナイテッドは、支払いについて公表しないとの方針を示している。


モフィットはこれまでに15人以上の保険加入患者を治療した。同院のイベット・トレモンティ最高財務責任者(CFO)は、「この治療に伴う金銭的な現実は、われわれの想定外だった」と述べ、「われわれは損をしていないが、利益も得ていないのは確実だ」と話した。
 病院や保険会社によると、問題は、保険会社が病院に治療費を支払うという既存の枠組みに、この新療法がうまく合致しないことだ。

伝統的に、病院は院内で施した治療に対してランプサム(一時金)を受け取る。薬品代や、追加コストがかかる薬品を外来患者に投与する費用などに対する一時金だ。だが、病院は、こうした支払いのいずれも、CAR-T療法のような薬品の代金を十分にカバーできないと述べている。

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