7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日ぶりに上昇。ハイテク株を中心に買い直されたが、上値は重かった。前週末に米上院で税制改革法案が可決したことを受けて週初に最高値をつけた後、もみ合いから抜け出せていない。
そんな「焦点ぼけ」の感のある米株を尻目に、市場は仮想通貨ビットコインの急騰の話題で持ちきりだった。今月初旬から急伸し、7日は1万6000ドル台に乗せた。
「人間はありとあらゆる価値のないものを買う」。元米連邦準備理事会(FRB)議長のグリーンスパン氏は6日、ビットコインを米独立戦争時に発行された「大陸(コンチネンタル)紙幣」になぞらえ、先行きに懐疑的な見方を示した。
大陸紙幣は戦費調達のため、独立をめざす米国の植民地が集まって発行したが、金などの裏づけもなく、乱発を経て戦争終結のころには紙切れ同然になった。米国では「コンチネンタルの値打ちもない」という無価値を表す慣用句として残る。
この急騰劇をみてバブルだと断言する市場の専門家は多い。米株価の先行きにとって重要なのは、グローバル市場の大勢には影響しない「フロス(泡)」にとどまるのか、背後にもっとやっかいな不均衡の存在を示唆するものなのかどうかだ。
「いかに小さなバブルであっても、ほかの資産の先頭ランナーである可能性はある。投資家は警戒すべきだ」。「債券王」と呼ばれた著名投資家のビル・グロス氏は7日、経済テレビのインタビューで警鐘を鳴らした。
グロス氏の目には、ビットコイン急騰劇のきっかけは「中央銀行による超低金利と資産購入だった」と映る。金融危機後の金融緩和は株をはじめリスク資産への猛烈な傾斜をもたらした。ビットコインはその氷山の一角というわけだ。
「2018年は慎重に」。そのグロス氏は最近、顧客向けにこんなメッセージを発信し、6つの警戒すべき点を挙げた。
第1の点で、リスク資産の急落時に「あまりに低い政策金利のせいで、債券がこれまでのように『保険』にはなりにくい」と指摘した。債券も高値に買い上げられてしまっており、資金の安全な逃避先としての役割が限られるというわけだ。
だが、ビットコインがリスク資産の一種として買われているうちはまだよいのかもしれない。
グロス氏は5つめの注意点として、リスク商品の先行き不安が高まった場合、「正統的なマネー」の需要が膨らみ、信用収縮の危機に直面するとした。市場で話題になったのは、マネーのカッコ書きにわざわざ「現金、金」に加え「ビットコイン」と記したことだ。
グロス氏の真意は分からない。テレビでは「ビットコインは今のところ投資対象で、通貨の代替物とはみなされていない」と話したが、もしビットコイン急騰が通貨の代替物としての需要の高まりを示すとしたら、大規模な信用収縮の前触れという見方もできる。
実際、仮想通貨を金の代わりとして買う投資家も存在する。ビットコインがこのまま一本調子の上昇を続ける展開は想定しにくいものの、紙切れになった大陸紙幣と同じ運命をたどるとも限らない。ビットコインとは距離を置く投資家も、狂騒曲の意味をよく吟味したほうがよさそうだ。
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