2017年12月26日火曜日

米リパトリ減税、年初のドル高要因も相場は天井か(WSJ)

米国で税制改革法が成立したことから、来年初めには米企業の海外留保資金の国内還流が大量に上り、ドル相場を揺り動かし、金融市場にも影響が及びそうだ。

 税制改革法には、企業が海外に溜め込んだ資金を国内に戻すのを促すため、1回に限りこれら資金に大幅減税を適用する条項が盛り込まれた。ある試算では、資金環流(リパトリ)の規模は最大で4000億ドル(約45兆3000億円)に達するとされている。リパトリに伴い、米国企業は海外で保有する資産を売却して、ドル建て資産を買うことになる。これがドル相場を押し上げる可能性がある。

 ドルは過去数年間上昇基調をたどってきた。ドル高は米国の多国籍企業の収益を圧迫する要因となり、輸出品の競争力も削いできた。多くの投資家は、トランプ政権の財政拡張やインフラ投資拡充の公約を追い風に2017年もドル高になると予測していた。しかし、同政権がこれらの政策目標の実現に難航していることから、12月22日時点でドルは今年7%近く下落している。

ステート・ストリート・グローバル・マーケッツの北米マクロ戦略部門の責任者リー・フェリッジ氏は、「税制改革法の施行により、ドルはある程度上昇するだろう」と予想した上で、「だが私は、それを売り場として利用するつもりだ」と語る。

 通貨アナリストの間では、ほぼ7年間にわたったドルの強気相場は、税制改革法を受けて頂点に達するのではないかとみる向きもある。米国に追随して他の先進各国でも金融引き締めが始まっているためだ。一部の投資家にとってドルの魅力は減じる可能性がある。

 バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチやBNPパリバ、RBCキャピタル・マーケッツはいずれも、来年はドル高でスタートすると予想している。しかし、ドル高基調が来年末まで維持されると予測しているのは、RBCだけである。

米企業が海外に滞留させている資金は、1兆ドル強と推定されている。税制改革法によりこのうちどの程度が還流するかについては、アナリストの間で見方が分かれている。そのため、同法がドル、さらには米経済に及ぼす影響を推し量るのは難しい。

 ジョージ・W・ブッシュ政権の2004年にもリパトリへの減税策が講じられ、内国債入庁(IRS)によれば米企業は3120億ドルを国内に戻した。ドルのその他通貨バスケットに対する為替レートを測るWSJドル指数は、リパトリもあってそれまで何年もの下落基調から反転し、05年にはほぼ13%上昇した。株価は、S&P500株価指数が3%上昇した。ただ同指数は、それまでの2年間より上げ幅は小さかった。 

今回については、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチはリパトリ規模を2000億―4000億ドルと予測している。同社はまた、ユーロの対ドル相場は、22日の1ユーロ=1.1862ドル前後から、18年第1四半期には1.10ドルに下落すると見込んでいる。

 資産運用会社デルテック・インターナショナル・グループのアチュル・レレ最高投資責任者(CIO)は、リパトリはドル需要を生み出し、ドル高をもたらすとみている。さらに、米国の成長を促進してインフレが高進し、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを誘発すると予想し、それがドルの一段高を招きそうだとの見方を示す。

しかしドルにとって差し迫った最大の脅威は、欧州経済が好調で欧州中央銀行(ECB)が金融緩和に終止符を打ち、利上げに向けて準備に入っていることだ。ドル建て資産を多様化したいと思っているが、ユーロ圏金利が歴史的低水準にあるため、ユーロに手を出してこなかった投資家は恩恵を受けそうだ。今年に入って12月22日時点で、ユーロはドルに対し13%弱上昇しており、投資家らは18年もユーロ高は継続するとみている。

 「ドルは多少上昇し、その後ユーロに対しては軟化すると予想している」と、JPモルガン・アセット・マネジメントの債券担当の国際投資最高責任者(ICIO)のニック・ガートサイド氏は話す。同氏は、ユーロの対ドル相場は18年末には1.30ドルまで上昇すると予測している。

PGIMフィックスト・インカムの最高投資ストラテジストのロバート・チップ氏は、長年にわたるドル高基調は終わりを告げそうだとの見通しを示す。ドルはその他通貨に対し2011年の底値からこれまでに30%超上昇している。
 「近年ドルの強気相場がずっと続いてきた。だが今や潮目は変わりつつある」とチップ氏は述べる。

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